SPECIAL INTERVIEW 中林鉄太郎さん Vol.2

By in インタビュー on 2010年4月12日



-シリーズ二つ目のbug’s-eyeも三本足ですが、
この商品が出来るまでの経緯は?


Birds-Footの仲間をメーカーさんは商品ブランドとして、

こちらは世界観を広げるために増やしたかったんです。

あと、売り場のことを考えたんです。

例えば、一つの商品は文具系の売り場に並んでいても、

次の商品が「 コートフックなんですよ 」なんて言ったら売り場が違っちゃうんですよ。

だから、まずは売り場が同じになるように、なおかつ金属で重いというところから始まったんです。

ブックエンドで本を立てておくのに人の手は要らないんで、そんなに触らないですよね。

だから、鉄鋳物で良い。

ところが、ルーペはよく触るわけですよね。

そうするとツルツルしている方が良い。

真鍮だと柔らかいので、それを活かしてデザインをしよう、と。

何故ルーペにしたかなんですが、真鍮はここ数年で値段がすごく上がっているので

Birds-Footよりも高い見積もりになったんです。

それで、ある程度の価格でもインテリア小物を購入してもらえそうな人をリサーチしたら、

10年前の60歳はデザインを自分の世界の事と思える人が少なかったけれど、

今の60歳はそうではないことがわかったんです。

しかし、そういう人たちが使えるようなプロダクトは少ない。

「そういう世代にこっちを向いてもらおう」と思って、老眼対策じゃないけれど、あえてルーペにした。

その後、

「 ルーペって使いたい時に限って見つからない 」という話になったんで、

「 しまうデザイン 」じゃなくて「 机の上に出しておいてもらうデザインにしよう 」

ということになったので、

Birds-Footのアイコンである三本足を使った、という部分もあります。

- 今後も三本足シリーズが?

出るかもしれないですね。

でも、三本足ばかりでも机の上が煩雑になりそうで(笑)

実は「 仲間なんだけど、ちょっと違うのをやり始めないと 」

ということでペントレイやレターホルダーを作ったんです。

自分を出さないデザイン

-デザインの中に「自分の色」を意識して入れていますか?

フリーになる前は「 こうしたい、ああしたい 」ってよく思ってました。

更に、フリーになると自分らしさを出していかないといけない。

色んな情報の中に埋没していっちゃうから。

「 でも、自分らしいってどうするの? 」なんてことを思いながら仕事をしているうちに

「 自分を極力出さないようにする。

自分がそこにいないようにする 」と考えるようになったんです。

さっきの制約条件の中に自分はいないですよね。

CDや本の都合とか、面の都合とかはあるけれど、私の都合はない。

そういった制約条件を見つけていくと、自然とデザインが寄っていくんですよね。

「 こういう風にすればいいんだ。それを私が受け止めればいいんだ。」って。

デザインが生み出されるまでの7つの要素

-デザインが生み出される環境や条件はどんなものでしょうか?
デザインを考える時の要素は七つあると思っているんです。

まずは「商品企画」目的と言い換えてもいい場合もあるけれど、

これに類するものがないとスタートできないですよね。

それから、
デザインコンセプト、デザインモチーフあるいはデザインイメージと言われるもの、

デザインアイデア、デザインの目論見、設計・製造の与件、あとは人・物・金のリソース。

この七つの要素が何らかの形で揃わないとデザインって実は始められないと思っているんです。

実際には何かが欠けてても進めなくちゃいけない時もあるんですけど。

よく、
「 デザインコンセプトとデザインイメージ・デザインモチーフ、デザインアイデアって何が違うの? 」
って言われるんです。

例えば、シニア向けの家具を作っている家具屋さんがあったとします。

そこの開発部長がデザイナーに「 次の商品企画は椅子だ。コンセプトはプリプリだ 」と言う。

「 はぁ~っ? 」となる(笑)

「 君ならデザインの力があるし、プリプリがコンセプトのシニア向けの椅子でよろしく!じゃあ! 」
って。

そういう強引な人っているんですよ(笑)

しかも、商品企画からは「 モチーフは動物だ 」なんて言われた時には更に困る。

プリプリはさて置き、動物にも色々いるし、それも女性向け男性向けとか、色々思うわけですよ。

でも、デザインのモチーフは画像なんかで色々と探せば良いですよね。

では、アイデアはどうすれば良いか。

例えば馬なら馬のどこをどう椅子に活かすのか。色んな活かし方がありますよね。

それを落とし込むのがデザインのアイデアです。

ここまで条件が揃ってくると「部長、やっぱりコンセプトのプリプリは実現できません」

って反論できる(笑)そうすると「そうだな。プリプリ間違ってたわ」と、話が進む。

そういう間違ったことを言われたとしてもね。

七つの要素全てが揃わないとデザインが出来ないわけじゃないんだけど、

自分の中で整理する為の定規としては適していると思うんです。

デザイナーは「今までとは違う、動物モチーフだけど良い椅子ができるかも。

それで社内で評価されて、場合によってはそれを足がかりに独立もなんて夢を持っているかもしれない。

でも、部長は「 これで他社の人気の椅子を駆逐する 」とか思っているかもしれない。

その目論見を1つに収斂させる…というよりは、すり合わせなくちゃいけないんですけれど、

それが上手く出来ていない事があります。

コラボレーションやチームクリエイションとか言われてますけど、

なかなかそうはなっていないですよね。世の中未だに丸投げが横行している。

「よろしくー」って(笑)「設計・製造与件」は、いつも木の家具を作っている会社が、

プラスチックの家具なんていきなり作れないわけで、

やっぱり設計・製造工程も組み込んでいかなくちゃいけない、ということです。

最後の人・物・金の「リソース」はそのままで、社内、社外含んだリソースも頭に入れておかないとバランスを欠いちゃう。

そうすると、この七つかな、と。

色んな仕事の依頼のされ方があって、みんなそれぞれフォーマットが違うじゃないですか。

だからこれを定規として「あ、これは出てるな」「出てるけど足りない」とか判断しています。

Vol.3 へ続く

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