SPECIAL INTERVIEW 赤城晴康さん×弘石雅和さん Vol.3

By in インタビュー on 2010年7月27日


「個人が強い、企業が弱い」ではなく、裾野が広がり循環する

赤城:発表の場が近くにあるという事ですよね。

それと、一年前には聞くだけだった人が、一年後には自分でも作れるようになった、

という循環があるんじゃないかと思います。

個人レベルですごく優秀な物が出てくるという事と、それを発表しやすい環境があるので、

ものづくりが企業だけの物ではなくなってきているという事ですね。

取り巻く環境が移行するのではなく、広がっていくという。

「個人が強い、企業が弱い」ではなく、裾野が広がりつつ、

そこから物凄い勢いで出てきているという感じですかね。

そういう媒体だからこそ広がったんだと思うんです。

やはり、作曲の「P」に1,000人いれば1,000種類のミクの曲があって、

大体その方には絵師さんが付いているので、

1,000人の絵師さんがいれば、1,000人のミクがいるわけですね。

それがすごく面白かったんじゃないですかね。

で、さっき言った通り、またこの1,000のグループの次の世代が2年後に

また同じ様に待っていて循環するかもしれないですし。

映像で映える物と実物で映えるもの

-初音ミクは、様々なキャラクターが世の中に出回っていますが、
今回アニマ様で製作されたバージョンの特徴などがあればお教えください。


 

 

 

 

 

 

 

赤城:映像で映える物と実物で映える物とでは、多分、違うと思うんですよ。

例えば映像の場合は、こういうSD系のキャラクターだと、体の末端を大きくしていくんです。

このミクも足が大きいと思うんですけど、それはモーションのアクションを派手にするため、

可愛くするためなんですね。その方がバランスが取れていると思うんです。

尚且つ、3次元上で造られているデータだけ見ていると、

「実際に作ったら、果たしてこの子、立つのかな」と心配になる(笑)データの状態では、

どういう角度であろうが、どういうバランスであろうが立ってしまうんです。

でも、立体となると重力が関係してくる。

それと、映像では「ここの角度が良くないから、この角度用のモデルを作ろう」

っていうことができるんですけれど、

でも、立体物ではそういう訳にはいかないじゃないですか。

顔の差し替えができるわけじゃないので。

ただ、今回はそれも上手くいったと思います。そういう部分でも、

映像の良さと立体物の良さは違っていると思います。

やはり、CG上では意識していなかった「物の厚みや複雑な構成」が、

立体化していくにはどうしても限定されるんだな、と感じました。

例えば、この髪の毛は、本来くるんと丸まっているんですけれど

「そこはたぶん危険だろう」ということで考え直したりだとか。

あるいはスカートも、映像ではポリゴン一枚で表側だけを表示させれば、

そこに厚みがなくても裏側のテクスチャが貼れるので、

面としては存在しているんですが、立体物としては存在しない。

そういう部分を作りこむこと、どれだけ作れば良いのかということについて、

今回は非常に勉強になりました。

1個しかない希少性

-今後の3次元出力サービスの可能性については、どのように感じられますか?

もしくは、CG制作会社としてどういった活用法を考えられますか?




赤城:単純に、完成度とクオリティが想像以上に高いと思うんで、

例えば、ある仕事のプロジェクトをいただいたら、

そのお客さんにデータだけを納品するのではなく、実費でも構わないので、

これを一体作ってサービスして納品するというアイデアは社内でも出ていますね。

映像データと立体物を一緒に納品して、例えば先方の受付に飾っていただく、と。

そういったサービスという形でやっていくと、「アニマさん面白い事してるな」と。

音楽もそうですよね、アルバムとかで。

弘石:そうですね。話しは逸れるかもしれないですが、昔はマスターテープって、

お弁当箱くらいの大きなサイズのテープだったんですよ。

世界中に一個しかない貴重な物だったんですけれど、

今はもうファイルになってしまって、存在しなくなっちゃったんですよ。

僕なんかもそうなんですけど、アナログレコード30cmで育った世代からすると、

やっぱりあのジャケットのサイズがあって、

そこからアナログ盤を出してターンテーブルに乗せて針を置くという、

その行為によって、音楽を楽しむ前の段階から気持ちが高まっているという感じなんですね。

やっぱり、作品のイメージを想像させる「物」があることは大事だと思いますね。

海外では、アナログ盤の製造数が増えてる国もあるくらいです。

赤城:ブームというのはもちろんあるんですけども、

フィギュアの売れ行きって10年前から凄く伸びていると思うんです。

要は、立体に慣れ親しんだ人達が非常に増えているということと、

「自分で作ってみたい」

「自分の作った3Dのデータを立体化して手元に置いておきたい」

「机の上に置いておきたい」

という要望は恐らく増えていくと思います。

後は、どれだけこうやって実例を発表できるのか、という事だと思うんです。

弘石:ある意味でのオーダーメイドですよね。一個しかないという稀少性。

-インタビュー冒頭にも登場した、
実際に制作されたスタッフの皆さんにも造形物を手に取っていただきました。


-スタッフの方、「欲しい」って言ってましたね。

赤城:クリエイターなんで、「自分の作った物は立体で欲しい」っていう気持ちの現れですよ。

そこに可能性がありますよね。

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